大手出版取次会社―出版社への返品入帳の要請は、優越的地位の濫用の恐れ

 公正取引委員会は、大手出版取次会社が、出版社に対し、東日本大震災で被災した書店の書籍につき、返品入帳扱いとして、その損害額を負担するよう要請したことを、優越的地位の濫用の恐れがあるとして、その撤回を指導しました。
 これを受けて、(社)日本出版取次協会は、「東日本大震災による被災商品に係る返品入帳について」と題する書面(平成23年11月14日付)にて、公取委の指摘により、「返品入帳処理の可否・金額を含め、取次各社として何ら特定の意向を示すものではない」として、前記要請を撤回しました。
 大手出版取次会社としては、被災した書店を救済する意向だったと思われますが、それにともなう負担を中小の出版社に負わせるのは、やはり独占禁止法上問題ありと指摘したことが注目されます。
 中小の出版社においては、被災した書店の救済には、取次会社と出版社で負担を分担するとの考えも出ているようです。