シンドラー社エレベータ事故の背景


東京地方検察庁は、7月16日、平成18年にシンドラー社製エレベータで高校生が死亡した事故について、同社元保守部長や保守点検会社の社長らを、業務上過失致死罪で在宅起訴した、との報道がありました。
この立件に際しては、エレベーターのメーカーと保守点検会社との過失が競合した旨が伝えられています。
この事件の背景を検討すると、一つの判例に思い至ります。T社昇降機サービス事件、本件事故や業務上過失致死事件とは全く関連はありませんが、エレベーターの保守サービスの分野では、メーカーと独立系のメンテナンス業者がコンペティターとして価格やサービスをめぐって競争を繰り広げています。
このエレベーター・メーカーと独立系のメンテナンス業者は、利害の対立が激しく、時として保守点検マニュアルが提供されず、また、部品もスムーズに提供されないこともあり、エレベーターの不具合情報の引き継ぎも行われていないこともある、との指摘もあります。
国交省においては、新設のエレベーターについては建築基準法の省令の改正により保守点検マニュアルの提出を規定し、又、大手エレベーター・メーカーは技術情報を独立系メンテ会社に公開する方針が伝えられています。
起訴の段階において、事件の過失の有無や態様を軽々に論ずることは避けるべきは当然でありますが、もしもこの不幸な事故の背景にエレベーター・メーカーと独立系メンテ会社との利害の対立があるとしても、利用者の安全は最優先されるべき事柄であります。
この利害の対立が、何の言い訳にもならないことを肝に銘ずべきであると考えます。